学園ディストピア
「・・・えー、本日は天候も大変よく、球技大会日和となって、生徒のみなさんは日頃の成果を存分に発揮し、より一層・・・」
遠くで校長の声が聞こえてくる。相も変わらず長い演説だこと。
ついに長くつらい(精神的に)練習も終り、球技大会当日。
バタリ
あ
またひ弱そうな親衛隊が1人倒れた。
今日は5月にしては気温も高く、日光もギラギラと照りつけていてまるで真夏日だ。
「・・・であるあるからして、」
バタリ、
あ、また倒れた。てか弱すぎだろお坊っちゃま。
不良たちはちゃんと整列する筈もなく銘々が好きな場所でしゃがんでだべってる。なにこれカオス。
バタリ、
あ7人目脱落。
「雨宮ー、第2体育館いこー」
金剛について体育館に向かう。
野球とサッカーはグラウンド、第1体育館がバレーボール、第2体育館がバスケットボールの試合会場だ。
やはりと言ってはなんだが那珂は1度も練習にこず、新庄さんと赤髪のケンカで殆どの時間は潰れた。
この人たちケンカとかするし、運動神経はいいんだろうけど。
不安しかない。
「雨ちゃーん、那珂見なかった?」
向こうで手を振るのは新庄さんだった。顔は笑ってない。おこだな。
「・・・見てないですけど」
大会自体サボるつもりなのか、那珂は朝起きると制服のまま何処かにふらりと消えてしまった。何も言ってなかったし、やっぱりサボるのだろう。
金剛とびびりつつ新庄さんのところまで行く。流石の今日は新庄さんも阪田もジャージを着ているが見事なまでの腰パンだ。しかし今は殺気が、殺気が見える。
「俺がさー、行ったら試合でられなくなるかもだし、この意味分かる?だから那珂クンを連れてきてくれないかなぁ?雨宮」
マジギレじゃないすか、新庄さん。俺がその顔を見て断れないとわかっておっしゃってますね。
「・・・呼んできます」
とは言ったものの、どこにいるのよ那珂さん。だけど、連れていかなかったら俺が殺されそうな勢いだ。
何としてでも那珂さんを見つけなければ。
・・・いない。教室にも理科準備室にもいない。
そしたら、あの裏庭だろうか。
校舎裏まで走り、草を掻き分けて森に入る。ああー、どこなんだよ那珂さん。
やはり茂みが終わったところで黒い頭が見えた。
「那珂さん、試合始まるよ」
「・・・」
返事がない。
「眠ってる?」
回り込んで那珂さんの前までいく。
「ダルい」
顔も上げずに言う。
「新庄さんが呼んでる」
実際はキレてます。
「余計、無理」
なんだこいつ駄々っ子か。
長引きそうだと俺は前にしゃがみこむ。
「それは俺が困ります。」
キレ たいけどこの人怖い。
「なんで?」