学園ディストピア
「ここは・・・なんですか」
俺は見上げていた。
どう見ても高級ホテル。軽く見ても高級マンション。
確か、今度は学生寮に案内してくれと言った・・・はず。
それが、これは
なんだ・・・
「あー、そっちはね。御坊っちゃまたちの寮」
若山先輩の声で現実に戻る。
ですよねー。
うち一般家庭ですもん。
その高級マンションのすぐ隣にはこじんまりとした2階建ての寮。結構綺麗だ。
比べると天と・・・高台ぐらいの差かな。
良かった。
・・・良かった。
「あ、でもオートロック、キッチントイレしゃわーつき!学生には贅沢だよね。」
確かに。
普通寮、といってもかなり良い部屋だ。
入って左手がロフトになっていて、上下にベッドがある。
右にはトイレとシャワー室、奥にリビングぽいとこがあってそこにキッチンもある。ロフトのとこが個人スペース、キッチンの横が共同スペースか。
て、同室者誰なんだろ。
部屋まで案内してくれた若山先輩は委員会の仕事があるからと帰ってしまった。うむ、同室者にでも色々聞くかー。
てか同室者いるのかな?
ロフト使う?
上と下か・・・・上にしよ。
俺は荷物を持ってロフトの階段を上がった。
机に自分のカバンを置くととりあえず制服を脱いだ。
そのままベッドに倒れこんでうつらうつらしていると、ついに寝てしまった。
がちゃ、
がた、
・・・誰かいる。
下に誰かいるみたいだ。
ぼんやりとしていた視界が明瞭な意識へと変わる。
俺は携帯の画面をぼやける目で確認する。
22:00
寝すぎた。
てか、誰なんだよ。まじで。
ロフトから顔を出して気配を確認する。
と黒髪のおにーさんがキッチンに立っていた。
同室者て同い年なのかな?
声かけたほうがいいよな。
「あの」
ゆっくり振り返ったお兄さん。
「あ?」
あ?てなにさ?
とは言えず。
その方の顔は酷く迫力があった。
普通だったら、絶対に声はかけたくないタイプ。
俺が答える前にそいつが言った。
「なに?お前」
「雨宮です、いちお、同室なんで」
でないと声をかけないと言う風に言う。
ああ、もっと愛想笑いとかしたほうがいいのか?
でもなんかこの人怖いよ。
「あそ、俺は那珂(なか)。」
おにーさんはキッチンでフライパンをかき混ぜながら言う。
少し掠れたような静かな声だった。