学園ディストピア
こちらには興味はないと言った風に素っ気ない返事だ。
会話したほうがいいのか?
この沈黙つらい。
変なこと言ったら怒られそうだし。
ジュー、という炒める音だけが耳の中で響く。
部屋中にいい臭いが広がる。
ぐぅ、
お腹がなった。そういや晩御飯食べてない・・・お腹すいたな。
コンビニとか売店とかあるのかな。
だめだ、この時間外出禁止だった。
オワタ。
「・・・おいしそう」
小さく呟く。
同室者の那珂の作っているのはチャーハンで、お店の料理みたいに美味しそうに見える。
ぐぅ、
と今度はもっと大きな音がして、那珂とロフトの上から覗く俺の目が合った。
少し不思議そうな目が、顔の印象を和らげていた。
というか、これは気づかれたな、恥ずかしい。
「食うか?」
那珂のその一言は多分ここに来てから一番嬉しい言葉だった。
「・・・いただきます」
ロフトから降りて気付いたが、この那珂という男相当でかい。
俺も175㎝あるし、そこそこ身長はあるが・・・こいつは俺でさえ見上げなければならないぐらいだ。
190近いんじゃないだろうか。
こんなんだったら目立つだろうな。
今はTシャツに制服のズボンだが 、筋肉がすごい。両耳には黒い小さなピアスをしている。
絶対に関わらねータイプだわ。普通に生活してたら。
取り敢えず体育会系じゃなくて一安心。
喧嘩は強そうだが。
無言で皿を渡され、俺は並んで床に座る。
部屋の中心には炬燵兼机がおかれていて、そこで床に座ってご飯を食べるようになっている。
美味しそうな臭いが鼻孔に湯気となってなだれ込む。
「いただきます」
早速口に入れると・・・・
すげーうまい。こんな上手いチャーハン食ったことねー。ヤバイ。
おかんの作った焼き飯はいつもすぐ飽きて最後まで食べるのが嫌になる。だけどこれはいくらでも食べられる。
すげーな、この人こんな見た目なのに。
「那珂さんは何年生なんですか?」
俺が勇気を振り絞って聞く。
那珂はまた妙なものを見たという風に俺を見返してきた。その目凄く苦手です。
「2年、お前外部?」
この人先輩か。気を使うなー。
「あ、はい。外部の1年です」
出来るだけ平然として言う。だってビビってるとバレたらダサい。
那珂は本当に興味無さそうだった。
まあ、持たれたところで困るんですがね。
あっという間に食べ終わって皿を持って立つ。ご馳走になったし、皿ぐらい洗わないとな。
「あの、片付けは俺がします」
那珂からの返事は無かったが、どうやらそれでいいみたいだ。
那珂は無言で自分のベッドの方へ行ってタンスから何かを出している。シャワーでも浴びるんだろう。
それを了解ととった俺はスポンジを手にとって少ない食器を洗った。
フライパン を逆にして乾かすと、バスルームの方からシャワーの音が聞こえてきた。
まあ、煩いのも嫌だけど。
静か過ぎる。
なんか、気まずいし、しんどい。
慣れたら大丈夫なんだろうけど。
少しだけ嫌だな。この人苦手だし。
怖そうだし。
明日から学校が始まる。
ダチとか出来たらいいけど。
やっぱり不安。