二度目の恋の、始め方
「お前達を蔑ろにしてすまない」
「…………」
「貴美子には苦労ばかりかけて、凛のことも任せっきりでよぉ。
俺はどうしょうもない父親だよなぁ」
お父さんの弱々しい声。いつもみたいに笑い飛ばしてくれた方が楽だったのに。
「……本当、いまさらだよ」
「すまん」
「早く元気にならないと許さないよ。ダメダメのお父さんでも、私のお父さんは目の前にいるお父さんだけだもん」
「凛、お前………」
「ごめんね」
布団から顔を出してそう言うと、少し涙ぐんでいるように見えるお父さんは、「……小便してくる」と小声で呟いて顔をそむけたまま病室を出て行ってしまった。
そんな私とお父さんのやり取りを見ていた悟さんは、優しく微笑んで。
「似たもの親子だね」
「似てますかね?」
「二人とも、頑固者」
「頑固ってもぉ……さ~と~る~さん!お父さんの方が頑固ですからね」
「はは。頑固なのは認めるんだね」
「……あ」
墓穴を掘る私を愉しげにからかう悟さん。やっぱり兄弟。笑うとよく似てる。