二度目の恋の、始め方
「母さん!いつパリから戻ったの?」
「あら悟~久しぶりねぇ。すっかり白衣が板に付いちゃって。今日の午前の便でコッチに着いたの。それにしても飛行機って嫌になるわねぇ。帯がとても苦しくってぇ」
そう言って苦しそうに帯を触る美しい女性は、どうやら雄大のお母さんみたい。
そんな光景を眺めていると、宮路院長が持っていたカルテを落として、焦ったように後退り、点滴の器具に背中をぶつける。
………なんだかスゴい慌てっぷりですね。
「あなた。今戻りましたよ」
「さ、佐和子……戻るなら連絡しろと、あれほど言っておいただろう……」
「別に良いじゃないですか。サプライズもたまには刺激になりますでしょう。
それとも、私に内緒で疚しいことでも?」
「い、いや別に……」
「そうですか」
ズカズカ、物凄い威圧で院長をベッド脇まで追いつめる佐和子さん。あの院長にも苦手なモノがあったのかと思うと身体の震えもほんの少し治まっちゃった。
そんな状況にもかかわらず、佐和子さんは私を見るとまた妖艶に微笑んだ。
「こんにちは。宮路佐和子と申します」
「あ、えっと。川嶋凛と申します」
「……凛ちゃん?じゃあ、あなたが雄ちゃんの彼女?モチモチでカワイイ!」
「え?ぶほっ!」
走り寄ってきた佐和子さんに突然ものすごい力で抱きしめられて気を失うところだった。それに何だか甘くて良い香り。