二度目の恋の、始め方
「そいつに触んなよ」
怒りを含んだ低い声。入口の壁にもたれて、少し伸びた茶髪をかきあげる雄大は私と視線が絡めば気まずそうに瞳をそらす。
「な~に雄ちゃん、ヤキモチ?器の小さい男は嫌われるわよ~」
「るせぇババア」
「あら相変わらず可愛くないのね。それより凛ちゃん、今度ウチにご飯でも食べにいらっしゃいな。良いわよね?あなた」
「………あ……ああ、お前が良ければ」
「ふふ。凛ちゃんが来るなら腕振るっちゃう。これからも雄ちゃんを宜しくね」
「でも、私はもう……」
どんどん話を進めていく佐和子さんの腕をやんわり解きながら、チラッと宮路院長を見れば、その額には冷や汗が伝っていて顔色がものすごく悪い。そんな不自然な院長に気付いた雄大がニヤリと意地悪く笑う。
「親父な、俺と凛を別れさせたいんだと。最近やたらとエラそうだし爺さんから何か言ってもらえば?」
「……お…おい!雄大……」
「あらそうなの?あまり酷いようなら、相談してみようかしらね~」
「さ、佐和子……、頼むから会長にだけは言わんでくれよ」
「じゃあ雄ちゃんと彼女の邪魔をしないでくださる?野蛮にもほどがあるでしょう」
「……しかし、雄大の将来を考えれば……」