二度目の恋の、始め方
「……あの、川嶋さん……」
さっきまで教壇にいた委員長の男の子が、私の真横に突っ立って、何か言いたそうにキョロキョロ瞳をさ迷わせている。
「あの?」
「文化祭の劇でロミオとジュリエットをやろうって案が出てるんだけど、川嶋さんにジュリエット役を頼みたいんだ」
「……じゅ、ジュリエットですか!?むむ、無理です!そんな重要な役!」
「いや、それが主役の黒田クンたっての希望で川嶋さんが良いって」
「黒田クン?」
真ん中の席に座る、一際目立つ容姿の黒田クン。目立つと言っても良い意味じゃなくて、ブクブク肥満体系に脂汗がスゴいって意味で。思わず視線を向けると黒田クンは咳払いを一つして立ち上がる。
「こ、このぼ、僕が指名してやってるんだ。ああ、有り難く思えよな!」
「……ハァ」
「ブハッ!」
そんな威張って言われても。内心、呆れてると隣の席の有馬がお腹を抱えて笑う。
「おい委員長~、アイツが主役で良いのかよ~?せっかくの劇がブッ潰れるぞ~」
「有馬クン。仕方ないんだよ。誰も黒田クンには逆らえないんだ。
逆らうと親が地方に飛ばされるからね」
「あ~アイツんち社長か~。なら仕方ねぇよなぁ。川嶋、ドンマイ」