二度目の恋の、始め方
「え~、りんりんが自分で渡しなよ~」
放課後の裏庭の死角になる場所。待ち合わせの時間に10分遅刻したにもかかわらず、急ぐ素振りも見せずにのんびり登場した理玖ちゃんに例の手紙を渡せば、物凄く嫌な顔をされて断られた。
「……でも、理玖ちゃん、葉山って人と友達だよね。渡すだけお願い」
「だってりんりん今日俺のこと無視したし~、それにイッキーはそういう類のモノ一切受け取らないもん」
「ごめん。理玖ちゃん」
「え~」
たぶん女の子からの貰い物の苺のゴムで前髪をちょこんと結んだ理玖は、黒髪を弄りながら渋々受け取ってくれた。
「ゴミ箱いきだけど。っていうかりんりんが自分で渡しにくれば良いのに~」
「どうせ受け取ってくれないもん」
「ふ~ん」
「ん?」
「別に~。ただ他に来づらい理由があるのかな~って思ってね~」
壁にもたれかかって、可愛らしい顔で私を見つめる理玖ちゃんは意外と意地悪。たまらず瞳をそらせば、適度に緩められたネクタイにいくつも付いた苺のタイピン。
「いつから苺好きになったの?」
「今の彼女の影響~。もう飽きたしそろそろ別れようかな~。
りんりん次俺と付き合わない?」