二度目の恋の、始め方
「くっ、楠木君!壱樹が大変なの!来て!」
「え?」
「………っ、美月ちゃん?」
上履きのまま、慌てた様子で裏庭に飛び込んで来た美月ちゃん。首を傾ける理玖ちゃんの腕を掴んで、校内へ走って行く二人。「私達も行こう」ときょんに手を掴まれて美月ちゃんと理玖ちゃんの後を追った。
あの事件以来、壱樹とは気まずくて会っていない。だってあんなに親身になって勉強教えてくれたのにテスト受けれなかったんだもん。学校を休みがちな山田さんとは、まともに顔すら合わせてないんだけどね。
「あんたがやったって証拠はあがってんだけど。いいかげんに認めればどうなの?」
「ハァ、ハァ、壱樹!」
人通りの少ない非常階段の薄暗い踊場。
久しぶりに見る壱樹は怯える山田さんを壁に追いつめていて、その表情は氷のように冷たい。山田さん、教室に居なかったけど今日学校来てたんだ。
「イッキー何してんだよ。その子、相当ビビってるじゃん。離してあげなって」
「理玖、邪魔。今コイツと話してんの」
「……話って雰囲気じゃないじゃん」