二度目の恋の、始め方
そのまま壱樹の腕を掴み、保健室に向かおうとした時、さっきまで理玖ちゃんと言い争いをしてた美月ちゃんが行く手を阻む。
「美月ちゃん?」
「ねぇイツキ。さっきのイツキらしくない行動、お母様が知れば泣くよ」
「……………」
「イツキは人を好きになっちゃイケない立場でしょう。両親の愛をたくさん注がれて生きてきたくせに、他人からも愛情を求めるなんて欲張りだよ。ううん贅沢。
私はそんなの、絶対に認めないから!!」
あの時と同じ。大きな瞳に宿った強い憎悪。チラッと壱樹を見れば、美月ちゃんを真っ直ぐ視界に捉え、少しだけ顔を歪めた。
やっぱりこの二人には何か、大変な事情があるんだと思う。壱樹をズタズタに傷付けてと言った美月ちゃんと、育った環境が違うと言った壱樹。
二人とも、どうしてそんなに寂しそうな顔で、お互いを見つめ合うんだろう。
「…………痛む?」