二度目の恋の、始め方
唇を噛み締めて黙り込んだ私を見て、雄大は呆れたように溜め息をついて頭を掻く。そして「ちょっと待ってろ」そう言って部屋を出て行ってしまった。テーブルに置かれた薬袋を見つめて、ありがとうと可愛気のある言葉一つ言えない自分が嫌になる。
雄大が呆れるのは当然だよね。
ベットのみの生活感が無い部屋に、時計の秒針だけがやけに大きく響いていた。
「こんなモンしかねぇけど。ほら、食え」
お盆を持った雄大が部屋に戻ってきたのは、それから30分後。差し出された土鍋に入った物体は真っ黒で、グツグツ、まさに地獄絵図で物凄い異臭をはなっている。
「……え、なに、コレ」
「見りゃ分かんだろ。粥。」
「お粥……作ってくれたの?」
「ま~な。兄貴が何か胃に入れて薬飲ませろってうるせぇんだよ。料理初心者で見た目は悪ぃけど、食いモンには変わりねぇ」
サイドテーブルにお盆を置いて、少し離れたカーペットの上に胡座をかいた雄大。恐る恐るスプーンで物体を口に入れると一気にくる苦味で、涙目になる。
「ごほ、ゴホッ」
「大丈夫かよ?」
「………うん。平気」