二度目の恋の、始め方

「ちょっと凛、どういう事!?葉山くん、凛に会いに来たの!?何で!?」

「分かんないけど。もう行こう」

鼻息荒く興奮しているきょんの手を引いて、葉山壱樹クンの前を急ぎ足で通り過ぎようとすると突然、反対側の腕を掴まれる。

「わ、!なんですか……っ」

「昼飯。一緒に食べようと思って」

「え!友達と食べるので、嫌です」

「コレ買ってやったんだけど」

そう言って、私の大好物のバナナオレを頭上にちらつかせてくる葉山壱樹クン。おもわず、ごくんっと喉を鳴らした私を見て、彼は瞳を細めてゆるりと口角を上げた。

「……卑怯者です」

「へ~。そういう態度ね。せっかく買ってやったのに、じゃあ良いや」

「行きます」

「え!?ちょっと凛、ホンキ!?」

驚いた表情のきょんにごめんね、と一言伝えて、葉山壱樹クンが差し出した黄色いパッケージを受け取る。金銭的に100円の余裕すら無い私にとって、バナナオレはもはや高級飲料。喉から手が出るほど欲しい。


「物分かり良くて助かるよ。あんまり手間取らせるようなら、今度は容赦しないから」


葉山壱樹クンは不機嫌にそう言うと、私の腕を掴んだまま廊下を早足で歩いて行く。
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