二度目の恋の、始め方
第一章 秘め恋
満開に咲いた桜。真新しい制服に身を包んで、県内一の難関と言われた英(ハナブサ)高校の門をくぐったあの日から半年あまり。すでに私の脳は悲鳴をあげていた。
「……もう駄目かもしれない」
机の上に広げた教科書。明らかに高校一年生で学ぶレベルではないその内容に、私は頭を抱えていた。
「マジで諦めなよ、凛。往生際が悪いよ」
「そんなぁ。助けてよ、きょん」
「どこが分からないの?」
そう言って、私のノートを覗き込むのは友達の宇佐美杏子。きょうここときょんは入学して初めて出来た友達。ストレートの黒髪にスラッとした身長、モデル並みにスタイルが良くて顔も綺麗だなんて羨ましい。
きょんから漂う甘い香水に意識が飛んでいると、顔を上げた彼女に睨まれる。
「ちょっと凛、アンタ聞いてんの?」
「……あ。ごめん」
「ハァ。集中力切れてる。テストは午後からだし少し休憩しなよ」
ため息を漏らしたきょんは、私の前の席の椅子に腰掛けた。