二度目の恋の、始め方
あれから美月ちゃんとは一度も会っていない。もともとSクラスの彼女とは会う機会なんてそんなに無いけど、あの事があって以来、美月ちゃんが頭から離れないでいた。
あの手首の傷が、美月ちゃんの心の闇?
それに触れてしまった私は、このまま見て見ぬ振りなんて出来ないよ。
「ソコ、問2間違ってる」
「え?」
「さっき説明したばかりなんだけど。ちゃんと聞いてたの?」
気が付けば放課後。目の前には呆れ顔の葉山クンの顔があって、その綺麗な二重の瞳は細められ明らかに怒りを含んでいる。参考書を見ながらフリーズしていた私はその恐ろしさにおもわず仰け反った瞬間。
「きゃっ」
「……っぶな、!」
そのまま椅子ごと後ろに倒れそうになるのを、間一髪で抱きとめられた私は葉山クンの腕の中にいて、ふわっと香る甘い香りにカァッと顔が赤くなっていく。
「ご、ごめんなさい!ボーッとしてて!」
「…………」
「ホント……もう、大丈夫です」
今日に限って髪をアップにしてきた私の解放された首筋に、熱い吐息がかかって、心臓が尋常じゃないくらい音をたてる。それでも葉山クンは私を解放してくれなくて、背中に回された腕は強みを増す。
「この間から上の空で、何考えてるの?」
「え?……あ、別になんでもなくて。今晩の夕食の献立ナニにしようかな~なんて」
「ふぅん。俺を前にしていい度胸してる」
「ひゃっあ!」