二度目の恋の、始め方

……ここの人、今……何しました……?

舐められた首筋を抑えて呆然とする私をあざ笑うかのように、ニヒルな笑みを浮かべて身体を離す葉山クン。「顔真っ赤だよ」そう言って何事も無かったように教科書に目線を移す。

「……きゅ、急に、ビックリするじゃないですか!」

「選抜まで時間無いの分かってんの?余計なコト考える暇があるなら、その空っぽの脳みそに少しでも数式叩き込みなよ。次はこんなんじゃ済まないから」

「……うっ……だからって……」

「はい次ココ、解いてみて」

悪魔さま、いや前世はきっと大魔王さまに違いないよね。力が抜けたままストンッと椅子に座れば葉山クンの長くて綺麗な指先が課題のプリントを差す。することは最低だけど、さすが学年トップの成績を維持しているだけあって教え方が上手。
嫌みなくらい隙がない人だよね。ホント。


「それにしても、まさか凛が特待だと思わなかった。家庭の事情?」


おおよそ二時間でありとあらゆる数式を叩き込まれ、フラフラする頭で帰り支度をしていると、そばの机に浅く腰掛けた葉山クンが不思議そうに聞いてくる。
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