二度目の恋の、始め方


「カウンター回れ!」

「っんにやってんだディフェンス!」

「どこパスしてやがる周り見ろ!エアゴールしたらただじゃおかねぇぞ」

夕方の空高くまで響き渡る罵声、怒声、悲鳴。有馬のかる~い口車に乗せられて第一体育館へ来たものの、早くも後悔の波が押し寄せる。もはや戦場と言ってもいいその光景を入口の扉から恐る恐る覗いている体操着姿の私は不審者に違いない。しかも。


「ダブルドリブルしやがって……貴様、やる気がないなら退部しろ!退部!」


………この顧問の先生、竹刀なんか振り回しちゃってすごく恐いんですけど。

上下赤茶の白いラインが入った指定ジャージのジッパーを首元ギリギリまで上げて、なるべく自分の顔を隠しながらクルリと校舎へ方向転換して帰ろうとするも。

「きたきた~!川嶋~こっち!!」

「ぎゃっ!?」

どこからともなく現れた有馬に首根っこを掴まれて、ズルズル体育館内へ引きずり込まれた。第二、第三と比べれば随分広い第一館内は男子と女子半々に別れて練習していて、その部員の多さに驚いた。

そのまま連れて来られた場所は、さっきまで竹刀を振り回していた顧問の先生の前。

「オニせん。これ、ウチの新しいマネージャー」

「は!?」

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