二度目の恋の、始め方
ギロリ、鋭く睨んでくるオニせんと呼ばれた大柄な先生はペットボトルの水を一気に流し込んで、ソレを片手で軽々潰す。
「名前は」
「え?あ、えっと川嶋です」
「川嶋。練習見学しておけ」
そう言って竹刀でコートを指す先生。
その先に居るのは他の誰よりも一際目立つ茶髪に長身、そして綺麗すぎる顔を歪ませて必死にボールを追う雄大の姿だった。
相手のディフェンスを交わし身方にスルーパス。身方がどこへ抜けるか考え、巧みにパスを受ける雄大が放ったボールは、アーチを描いて相手のリングへ吸い込まれる。
「フローターシュートだ!」
…………やっぱり雄大は、スゴイ。
ドキドキしながらコートで走り回る雄大を興奮気味で目で追っていると、隣にいたオニせんが驚いたように瞳を見開いた。
「お前、あのシュートがフローターだって分かるのか?」
「そうですね。レイアップにしては姿勢が高過ぎる気がして」
「…………」
「先生?」
「ふ、良いだろう。有馬ぁ。川嶋には来月からマネージャーとして来て貰うから雑用やその他諸々、教えてやってくれや。俺は男バスの顧問で鬼頭だ。間違ってもオニせんとか呼ぶんじゃねぇぞ」
「ウス!」
うちの父とはまた違う威厳を持った鬼頭先生は、さっきより機嫌良さそうに鼻歌なんか歌いながらコートへ戻って行く。