二度目の恋の、始め方
「ここが部室。鍵はオニせんからスペア貰え」
第一体育館から少し離れたログハウスのようなお洒落な外観。運動部の部室っていえば狭くて暗くて冷たくて。そんなイメージだったのに、さすが名門の英は違うね。
鍵を取り出して中に入る雄大の後を追って、期待に胸を膨らませて部室へ入れば、そこは想像とかけ離れた悲惨な状況だった。
「……ウッ、臭い」
「あ~、しばらく掃除出来てねぇからな。洗濯機はアレ、簡単なキッチンはソコ、シャワールームとトイレもあるけど俺等は基本、体育館に完備されたのを使ってる」
「へ、へぇ」
「取り敢えず最初の仕事は、ここの掃除でいいんじゃねぇの」
洗濯籠に収まりきらずに散乱した汚れ物。机の上に無造作に置かれたイヤらしい雑誌。いつ食べたのかも分からない大量のカップ麺。あまりの酷さに目が回りそう。
「大丈夫かよ」
呆然と突っ立っている私を見て、テーブルの雑誌を片付ける雄大の表情は呆れ気味。
「……何とかするよ、うん」
「つ~かお前、選抜もうすぐだろ?こんな事してる暇あんのかよ」
「だいたい予習出来てるもん。あとは過去問と照らし合わせて追い込みかけるよ」
「バイトは?」
「先生に事情話して、抜けさせて貰うかな」
「………すげぇ詰め込みよう」
まずは換気しないと。ジャージの裾を捲り上げて、全部の窓を解放する。次に洗濯。幸いにも大型のドラム式、乾燥機も付いてるからあとは洗剤ごと放り込んでスイッチを押せば完了。