二度目の恋の、始め方
「いった、いよ!何するの!?」
「……約束したのに嘘吐き」
ボソッと静かにそう呟いた山田さんは物凄い眼力で私を睨むと、その華奢な体つきとは対照的に、物凄い力で私の腕を掴んだまま女子トイレの個室に放り込んだ。
「明日の朝までソコでおとなしくしてれば」
「明日ってそんな……大事なテストなの!山田さんお願い、やめて……」
「嘘吐きの川嶋さんが悪いのよ」
「嘘なんてついてないよ。ちゃんと手紙も壱……葉山君に渡したよ?」
「……でしょ」
「え?」
「地味で根暗で、何の取り柄もない私が葉山君に相手にされるはずないって、陰で馬鹿にして笑ってたくせに!」
被害妄想してる山田さんの顔は涙でぐちゃぐちゃで、私が弁解しても今の彼女には言い訳に聞こえて余計に怒らしてしまう。
「………そんな。あっ、」
かける言葉が見つからなくてオロオロしていると、山田さんは個室のドアを勢いよく閉めて外側からロックをかける。
「開けて!開けてよ!……きゃっ!」
ドンドン、ドアを必死に叩いて向こうにいる山田さんに助けを求めるけど、次の瞬間に頭から降ってきたのは冷たい水。
全身びしょ濡れで、トイレは水浸し。去っていく山田さんの足音を聞きながら、最悪の状況にフラフラとその場に座り込んだ。