3年目の恋
諦める恋
3年目
「杏ちゃんー!!」
そう呼ばれて振り向いたのは杏ちゃんことこの私、榎本杏奈。
「ゆりりんじゃん。なにー?」
このゆりりんこと城戸友梨香は
まあ、いわゆるクラスのアイドル。
ほんとにかわいい。
パッチリ二重にぷっくりした涙袋。
すらっとしてて身長は高め。
スタイルもよくてアイドルそのものだ。
こんなにちびで色気の何もない私と友達なのがいまだに不思議でしょうがない。
私の友達はもう一人。
あ、友達っていうかいつも一緒にいる・・・
いわゆるいつめん!てことかな!
そのいつめんの一人が名取波月。
髪がさらっとしていて顔は大人しめなのに恋愛のスペシャリスト!どんな恋愛相談も乗って恋を実らせてる天才だ。
「で?ゆりりんはなんのようです?」
「いや?今からテスト返ってくるから」
「・・・へ!?」
急に言わなくてもいいのに・・・
「だって、返ってくるでしょ?」
「そうだけど言わなくていい!!」
「ま、いいじゃん笑別に点数悪いわけじゃないしさ!」
「へへへっまーね笑」
「自分で言う〜??」
ゆりりんと話してると時間がすぎるのが早く感じる。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと同時に席に着く。
ブツブツ・・・
「やべえやべえやべえやべえやべえ・・・」
隣に座る男子がつぶやきはじめる。
非常に怖い。うん。
「あのさ、神矢?黙ろうか」
「お前は余裕だからそういうこと言えるんだよ。オレはやばいんだ。」
「それはあんたが勉強しないからでしょ!?今回はなんてんだったの?」
「は?数学なら14点だぞ?」
「100点満点中でしょーーー???ありえない!!!」
「お前!声でかい!」
「は?」
そう言われて顔を正面に戻すと目の前には数学の鬼教師、岸部が立っていた。
「榎本。テストの点が取れてるだけじゃ成績はやらないからな。」
真顔で言われると非常に怖い。
でも正直思うと98点とってるから成績は悪くならないんじゃないかと思う。
「なに?お前。98点みせびらかしてんの?嫌味?」
「え?なに?逆に神矢は14点見せびらかしてるの?うけるーw」
「お前ほんとうざい」
そんなこんなで会話してる隣の席の男子は神矢龍。
中学校が同じでいまだに仲がいい。
そして・・・。
「あーあ、テスト頑張ったし神様ご褒美くれないかなー」
「くれないでしょ絶対。14点のどこが頑張ったの?」
「オレにとっては頑張ったんだよ!はあ・・・」
「また恋の悩みですか?」
「そうなんだよ。早希が可愛くて」
会話の中に急に出てきたのは早希ちゃん。
神矢の中学のときからずっと好きだった人。
性格よくて頭もよくて運動もできて。
いわゆる完璧女子だ。
実際本当にモテる。
「早希ちゃん・・・ね。」
「お前には分からねーだろうな。この実らない恋の辛さ」
「は!!?分かりますけど!?」
痛いくらい分かるよ。
「今好きになって何年目よ?」
「3年目だけど?なにかー?」
「なっが!うわ、なっが!!」
「うるせえよ!お前には分かりませんよー」
「だから分かるもん!!!」
そうだよ。分かるよ。
だって私も━━・・・
ほかの女の子に・・・
早希ちゃんに恋してるあんたに恋して
3年目だから━━・・・