新たなる言葉
秋山少年は説明を続けた。
「いいかい、田中君。イエスかノーか問われることがよくあるよね? でも、どちらとも答えたくない場合があるじゃないか……。そんなときに、“はいいえ”を使うのだよ」


「んー。どんなシチュエーションで“はいいえ”を使えばいいのか、皆目見当がつかないや」
田中君は申し訳なさそうに、そう言った。


「例えば、田中君が将来医者になったとしよう。そして、ガンを告知していない患者さんに『私は末期のガンなんですよね?』と言われた時に使えるよ」


「じゃあ、ちょっとそのシチュエーションやってみますか」
田中君は、そう言うと医者の真似を始めた。

「秋山さん、具合はどうですか? 春頃には退院できますからね」
田中医師の台詞である。

それに対して、秋山少年は患者役である。
「先生、本当のことを言ってけさい。私は末期のガンなんですよね?」
秋山患者が言う。




「はいいえ」
と田中医師。


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