しょっぱい初恋 -短編集-
「……」
嘘だろ…。
え、何これ…。
部屋、ぐっちゃぐちゃなんですけど…。
「な、ななななな何でぇッ…!?」
どういうこと?
は? え?
空き巣? まさかの空き巣ぅぅぅぅ…っ!
ポカンと相当間抜けな顔をしていたんだろう。
「あの…」と声をかけてきた大家さんが手をつねって笑いを堪えてる。うるさいやい!
因みに大家の隣で「やっほー」と手を振るのは私の馬鹿兄。
「今お兄さんに呼ばれてきたんですが…いやまぁすごいことになってるみたいで」
「……」
「晴ちゃんの色気のない下着が散乱してるね」
とりあえず馬鹿兄のみぞうちにストレート。
大家さんは流石にやめておこう。
他の部屋もいくつか被害にあっているらしく(このボロアパート、セキュリティなさすぎ)、既に警察が調査していた。
終わり次第、部屋に戻っていいと言われたけど、流石に気持ち悪い……。
お兄ちゃんは部屋を片付けたらバイトに行くっていってたから、今日は明のところにでも泊めてもらおう。
因みに両親は今日も遅いらしい。
「うわっ、部屋やべぇ」
と言うわりに声のトーンが緊張感ゼロの声の方を向くと、さっき秋人と抱き合っていた女が。
もちろん秋人もくっついてる。
というか!
お前、私の隣の奴なのかコラ!
堂々としてんなコラー!!
「あ、晴じゃん」
よっ! と軽々と片手をあげるお前は一体どういう神経をしているんだい?
「こんなとこで何してるの?」って…。
ねぇ、それ本気で言ってる?
アンタ私を家まで何回も送ってくれたよね?
殺されたいの? あぁ、殺されたいのそーかそーか。
「晴…?」
うるさい、呼ぶなハゲ。
くそー…、何か言ってやりたいのに。
「ふざけんな!」って、あのヘラヘラ顔に一発食らわしてやりたいのに…。
うぅ…、悔しいのに…っ!
「晴ちゃーん?」
「…うるさい」
「へ?」
「気安く話しかけるな! 最低最悪ハゲ頭! アンタなんか大ッ嫌い!!」
「アンタなんか鼻から大量出血で死んでしまえ!!」
そう言って走ってその場から離れた。
「…っ…」
なんだよ、どれだけツイてないんだ私。
最後の最後で自分の彼氏の浮気現場を目撃しちゃうなんてさ。
あぁ、もう…。
泣きたくなんかないのに…。
「最悪だよぉ…」
「なんで?」
「だってバカ秋人がさ…」
「オレがどうしたの?」
「浮気を……って!」
バッと音が出るぐらいの勢いで振り向くと…
「ギャーーーー!!??」
なんとそこには満面の笑みの秋人が立っていた。
スゲー、角度的に恐い…。
「色気のない声だねー」
「あ、あああああ…ッ!!」
「うん、秋人」
「何で? ホンモノ?」
「しばかれたいの?」
い、いはーい!
秋人さん、現実だって分かったから頬っぺたから手離してくださいよー!!
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