しょっぱい初恋 -短編集-
「あらあら、明に晴じゃん。どーしたのよ」
その声に振り返ると、無邪気な顔でこちらに近づいてくるクラスメートの秋人(あきと)とその隣には見慣れぬ女子学生が。
この重苦しい雰囲気に、「どうしたの~?」なんてよく聞けたもんだな。
コイツは、絶対にバカだ。
「「……」」
「…ありゃ?」
しかも毎回会う度に連れが変わってるんですけど。
よくやるよな、コイツ。
ハァ…、と思わずため息が出た。
秋人のせいでまた幸せが逃げていった。
「なんだよ、そのため息は」
「別に…」
「ふーん」
対して興味の無さそうな返事のあと、沈黙する場。
気まずいわ!
というか私の家の前でリア充空気をばら撒きにくるんじゃない!
結局横にいる見知らぬ女子学生(名前聞いてあげなくてごめん。でも興味なかった)の「早くいこ~」の一言で二人は消えていった。
「なんかさ…」
「うん…。あいつのせいで空気が一気に変わっちゃったわ」
「ハハハ…、まぁでも結果的には良かったのかも」
「…?」
「ううん。……明、ありがとね…」
だけど気分が軽くなったのは事実だ。
ちょっぴり癪だけど、空気の読めないアイツに「ありがと…」と心の中で礼を言った…。
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次の日、クラスでグループごとの課題が出された。
それも運悪く、京子を含めた3人1組のグループ。
なんの苦行だよ、これ。
「あっ、晴! 課題頑張ろうね!」
「…うん」
ニッコリと無邪気に笑う京子に顔が若干ひきつったが、なにくそ負けるかと精一杯の笑顔を作った。
因みにこの課題は外で行うもので、学校の近くにある幾つかの神社の中から1つを選び、そこの空間やらなんやかんやを調べることになっている。
終わり次第自由解散なので、ちゃっちゃっと済ませてしまおう。
「京子は正面から、元(はじめ)くんは裏から。内装は基本的に私が回るから、2人は基本外側をよろしく」
「了解」
「わかった!」
じゃ、一時間後にここで。
そういって、私たちのグループは一時解散をした。
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