I do does not matter.
それは唯一のガラス製で、中には妖精をモチーフにしたものが並んでいた。
他のものと同様にハート型の紅い宝石があしらわれているのだが、他は一つなのに対し、妖精をモチーフにしたものだけは幾つかの宝石があしらわれていた。
その中にぽつんと、狼をモチーフにしたピアスが一つだけ置いてあった。
その狼も妖精と同様に幾つかの宝石があしらわれている。
左目は蒼い宝石で右目は紫の宝石。
首を囲うように金の宝石があしらわれていて、左前脚のみにアンクレットのように紅い宝石が散りばめられていた。
ピアスだというのに手の込んだ作りのそれはどうしようもなくあたしの目を引いた。
狼がこちらを見つめているようで、目が合っているような気がして、ずっとそれを見つめていた。
「その子を気に入ってくれたかい?」
気づけば左隣に店主が、右隣にマスターが立っていた。
「良かったら連れてってやっておくれ。その子も君を気に入ったようだから」
無言で頷いたあたしにそう言った店主は優しく穏やかに微笑んでいた。
「この子はとても寂しがりなんだ、肌身離さず、持ってやってくれ」
そっとガラス製の扉を開いて狼のピアスを取り出した店主はあたしの手にそれを乗せながら言った。
「あの、お代は…」
そっと扉を閉めてレジへと帰ろうとする店主に声をかけると
「また、来てくれるかい?皆君を気に入ったようだから。その約束を今回のお代としたい」
「…また、来ます」
また、だなんて約束はあまり好きじゃないけれど、ここなら何度でも来たいと、そう思えた。
だから約束した。