触れない温もり
ん……


目が覚める。


ばっと起き上がって前を見ると、綿。



綿?



そっか、僕あのあと即寝て……


ということは、今見えてる綿は布団のですか……


ふと、横を見ると、ベットの下に軽く差し込む光が



こんな時間に電気……?


羚くんまだ起きているのでしょうか……?


それとも僕が思ってるほど寝ていない……?




別に、触れられないのだからそのまま起き上がってもいいのですが、ベッドの下からゆっくりと出る。


時計を見ると、2:00


顔をあげて、机のほうを見ると、羚くんは勉強をしていた。



……あんななりで勉強とかするんだ…



ゆっくり背後に忍び寄り……




「わっ!」



「おわぁああ!!」


驚いた拍子に椅子ごと後ろにひっくり返る、羚くん。



「いっ…いってぇ………」


それ以上何も言わず、のそのそと椅子を立てらし、座りなおす。




反応が薄く、怒ってこない羚くんに調子を狂わされてしまう。



「あ……ごめんなさい………」


少し反省。


真面目に勉強してる中、脅かすのは良くなかったですね………


しゅん…としてると隣から羚くんの声。



「はぁ……お前本当に影薄すぎだぞ?
幽霊か……あ、幽霊だったな」


若干声に元気がない。


「幽霊ですよー。
それにしても大丈夫ですか?
それにこんな時間まで勉強なんて……」


羚くんの疲れきった背中を見ながらそう問いかける。


「明日は、進級テストがあるからな。
もう高3だぞ?
ここで取らないとな」



……あれ?もしかして結構真面目くん?



「羚くんって意外に真面目ですね」

かるく笑いながら言う。



そんな言葉に不機嫌そうな口調で返ってくる。

「るっせえな。
ちゃんとしなきゃいけねぇもんは、ちゃんとしなきゃいけねぇだろ?」






「あはは…っ」



「な、なんだよ……」


軽くたじろぐ羚くん。



「だって本当は怖い人かと思ってたんですよ?
かつあげビビってたのもほかに理由があるのかと思ってましたし。

だから、安心したら笑いが……」



ずっと笑い続ける僕に、振り返って呆れた笑みを見せる羚くん。



「そんなに、真面目なのが意外かよ……」


「はいっ!」


あ!

「ところで、羚くんはまだ寝ないんですか?」



「あぁ…このページ終わったらな」


再び机に向かいつつそう言う。



「お前こそ、今まで外で過ごしてて疲れてんだろ?
久しぶりの室内だ。ゆっくり休んどけ」



そう言う羚くんは机に向かっているからどういう表情をしているかは分かりません……


でも、


「ありがとうございますっ!
次は床で寝るので」


羚くんには見えてないと思うけど、精一杯の笑顔を見せる。



「おお、布団とか出せねぇのが悪いが、透き通るもんな」


「まあ、それは仕方ないですよねー」



たはははと笑う二人の声。



久しぶりの平穏で静かで、でも寂しくない夜。




「こんな夜がずっと続けばいいのに……」



小さく呟く。



「ん?なんか言ったか?」


「いいえっ。なんでもー
それではおやすみなさいっ」



そう告げてベッドの隣に寝転がると同時に、再び深い眠りについた。
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