アメフル
「あの、どうして学校で傘、借りなかったんですか?」



私の傘を持っている骨張った男の子の手を見ながら言った



「んー」



お互いの腕が触れるほど近い距離



もう一度彼の横顔を見ようと目線を上げると、私の方を見ていた



驚きまばたきを繰り返す



彼は歯を見せて笑うと



「君に会えると思ったから」



さらりとそう言った



今度はまばたきが出来ず、彼の笑顔に釘付けになってしまった


「……っえ」



喉から漏れ出た声は雨にかき消されるほど小さかった



その声で我に帰り、左手を顔の前でブンブン振った



そして瞬時に思いついたことを雨にかき消されないように言った



「あ、あ、そうですよね。傘!傘持ってくるだろうって思ったんですよね。でもすみません。見てのとおり思いっきり忘れてしまって……」



雨の音を聞きながら返事を待った



しかし返ってきたのは言葉ではなく、笑い声だった



「ど、どうしたんですか?」



「うん。傘のこと気にしなくていいよ。持ってきてもらっても使わなかっただろうし」
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