アメフル
雨の音が聞こえなくなったのと同時に知らない声が耳元で聞こえた



上を見ると黒い傘が広がっている



そのまま首を回すと学ランを着た男子が立っていた



フワフワしている色素の薄い髪、昨日と同じ笑みを浮かべている



「今日、午後から80%って言ってたのに。2日連続雨に打たれるとか風邪引くよ?」



眉を八の字に下げ首を傾げる



「あ、ありがとうございます……」



この人すごい自然に話しかけてくるけど私たちほぼ初対面ですからね



学ランは満足そうに笑うと、私の背中を押し歩き出した



「家、どこ?」



横に並ぶと彼はそう聞いてきた



「えっと、うちは曲がらずにまっすぐ行ったとこなので、たぶん、あなたの家より先だと思います」



「そっか、家まで送るよ」



「ええ!?」



彼の方を向くと、またにこやかな表情をしている



「えっあの、そこまでしていただくのは、申し訳ないです……!」



なんかすごい丁寧語になった



「まっすぐ行くって言ってもすぐつくし……」



足元に視線をおとす



「じゃあ、俺の傘貸すよ」



「えっ」



「俺ん家あの角曲がったらすぐなんだ。だから貸すよ」



彼の指さす方向を目で追うと昨日の曲がり角だった



「でも……」



「いいんだって!俺のことは気にせずこの傘使って!ね!」



そうこうしているうちに彼の曲がる角についていた



「じゃあまたね」



そう言うと彼は走って傘から出ていってしまった
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