廻る時の中で


「ごめんね、爺や」

私はそう言って爺やの肩に手を置いたが、爺やは啜り泣いている。

私は深いため息を吐いた。

いつか、お父さまに変わってこの国の民を守りたい、と思ってきた。

だけど、今私がしていることはそれとは正反対のことなのね。

誰にも言わず城を抜け出すことは、この国の将来を左右しかねないのね。

そう思うと胸が苦しくなる。

爺やにも、もう泣いて欲しくない。

だけど、貴方に会えないのはつらすぎる。

もし爺やに、貴方に会うために城を抜け出しています、って言ったらどうなるのかしら?

きっと反対するわ。

だって一国の姫がこの国の人ではない者と会っているのよ?

そんなの、言える分けない。

変に誤解されでもしたら、貴方に迷惑がかかってしまう。

一体私はどうすればいいの?


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