廻る時の中で


今、この場が夢なのか、そうでないのか。

今の私にはわからなかった。

ただ、見開いた私の眼から一筋の涙が伝う。

今の私にわかることは、この涙は悲しみの涙ではない、ということだけだった。

貴方はそんな私を見て微笑むと、私の両頬を手でそっと包んだ。

大きくて、暖かい。

きっと剣を握るのに、きれいな手をしてる。

「泣かないでください」

貴方はそう言った。

だけど私は涙を止められなくて。

貴方は困ったようにもう一度微笑んだ。

そして…、

“チュッ”

互いの唇が軽く触れ合う。

「っ!!」

「ほら、涙が止まった」

貴方はそう言って私の頬から手を離した。

確かに私の涙は止まったわ。

「顔、赤いですよ」

「っ!! もうっ!!」

そう言うと、私たちは笑いあった。


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