廻る時の中で
「何やってんだ、俺は…」
俺は星空を見て呟いた。
さっきあの姫君にキスをした。
濡れた漆黒の大きな瞳に魅せられて、
咄嗟の行動だった。
初めてあの姫と会ったとき、運命だと思った。
一目惚れだった。
会う度に想いは強くなっていった。
ローゼは自分のことを包み隠さず話してくれた。
自分の立場も、背負うべき役目も。
だが、俺は話していない。
隠していることがある。
やがてはローゼに言わなければ、と思ったけど、言えなかった。
国に帰ったら、やるべき仕事はすべて片付けて、あいつを迎えにくる。
あいつが笑って暮らせるような未来をつくる。