廻る時の中で
場所は変わり、ここはウェルナンド国のお城の中。
ローゼが帰ってくる、ほんの数分前である。
ある一室で一人の老人が窓辺にたたずんでいた。
“コンコン”
彼のいる部屋のドアが叩かれる。
「入りなさい」
老人は威厳のある声で言った。
それは、いつも彼が仕えるこの国の姫君に対するものと違っていた。
「失礼致します」
ドアのところで改まって礼をするのは、まだ若い男。
上下黒の服を着て、いかにも“暗役”のようであった。
「どうだったかね?」
老人が男に問うが、顔は窓の外を見ている。
「はい。お察しの通りでした」
男はそう言うと何やら報告を始めた。