廻る時の中で


その問題の部屋の中には、二人の男がいた。

一人はこの部屋の主人であり、この国の姫君に仕える身である初老の男性。

もう一人は上下黒い服を着た、まだ若いと思われる男性。

「まさかとは思っていたが、このようなことになるとは…」

初老の男性は頭を抱える。

「確かなのか?」

「はい。姫様が毎日のようにお会いになっている男性はバイス帝国の皇子です」

若い男性はよどみなく答える。

「ご存じだとは思いますが、バイス帝国は周辺諸国に侵略を開始しています。この国は直接隣り合っているわけではありませんが、近隣諸国には変わりないです」


< 45 / 59 >

この作品をシェア

pagetop