廻る時の中で
しかし、バイス帝国の皇子とは…。
初老の男性はため息を吐く。
いくら姫様が想う人でも、あの侵略国家の皇子では認めるわけにはいかなくなる。
この国の民、貴族、議院は許しはしないだろう。
「なぜあの男はこの国に来ているのだ?」
「はい。タスク=バイス=ルシファードは偵察のために来ていたと思われます」
「やはりな…」
侵略国家の人間がこの国に来てすることなど、それ位しかあるまい。
なおさら、姫とあの男をこれ以上会わせてはならないと思った。
その時だった。
“トンッ”
自分達のいる部屋のすぐそとで何か物音がして、初老の男性と若い男性は、はっと扉を振り返った。
若い男性は直ぐ様扉へと近づき、開いた。
そこには、異様な程青ざめた顔をしたこの国の姫がいた。