廻る時の中で


「姫様!危のうございます!!」

下から叫ぶ爺やに、私はもはや耳を貸さない。

あとちょっとで、いつも腰掛けている太い枝に辿り着く。

「…よいしょっ、と…」

近くにあった手ごろな枝に手を掛けた。

その時だった。

“バキッ”

枝が不吉な音を立てた。

私の体が、宙に舞う。

まるで時が止まったかのように、私には全てが一瞬静止したかのように見えた。

だけどそれはやっぱり一瞬。

すぐに頭が下になって、物凄い速さで落ちていく。

「きゃあぁぁぁぁ!!」

「姫様!!」

爺やが叫んだのは聞こえた。

私は咄嗟に眼をかたく閉じ、体中に力を入れた。


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