廻る時の中で


「姫様のお体がご無事でようございました」

爺やが安堵の息をつく。

木から落ちた私は、そうとうな高さだったにも関わらず傷一つ無かった。

それも、貴方がいてくれたから。

「この国の姫様とは知らず、お体に手を触れ、失礼をいたしました」

そう言って、お辞儀をする貴方。

落ちていく私を、滑り込むようにして受けとめてくれたのに、どうして貴方が謝るの?

私が謝らなきゃ。

でも、うまく言葉が出てこない。

鼓動の音が大きすぎて、貴方に聞かれないか不安で。

今、きっと顔が真っ赤だ、私。


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