廻る時の中で


「姫を助けていただき、感謝いたします」

お辞儀をした貴方に、爺やも頭を下げる。

「では、私はこれで」

貴方はそう言うと、軽く会釈をして背を翻した。

「姫様、爺は寿命が縮みましたぞ!」

爺やが私に説教にかかるが、今の私には聞こえなかった。

去っていく貴方に必死で。

「あのっ!」

私は半分裏返った声を上げた。

すると貴方は振り向いてくれて。

「助けてくれてありがとうございました!!」

頑張って叫んだ。

けど、ちょっと声が大きすぎたかな、と不安になったんだ。

でもね、貴方は一度微笑んでくれたんだ。

あの笑顔は、たぶん一生、忘れられません。


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