Summer night
"今"と"あの日"


いつもと同じドアノブの温度。

いつもと同じ挨拶。

いつもと同じコーヒーの匂い。

いつもと同じデスクの上に溜まった資料。

いつもと同じデスクトップ。


私は今日もいつもと同じ一日を過ごす。

「人生のなかで同じ日などない」とか言うけどさ、まぁそりゃ日付が同じ日はないさ。でも実際内容はほとんどっていうか全く同じなんだよね、私は。つまらない、なんてもんじゃないよねこんな人生。



「星玲奈ちゃん、今日飲み会どう?」

「ごめんなさい、今日はちょっと」

いつもと同じ面倒な上司。
毎日のように飲み会ばっかで。どんだけストレス溜まってんの。私はいつも同じ返答しかしないのだから呼ばなければいいのに。大体、20になったばかりの酒慣れしてない私を誘うなんて。まずこんな出版社なんかで働かなくちゃいけなくなったのはあの日のせいだ。あの日が無ければ私はもっと楽に暮らしていたはずなのに。


私の人生をめちゃくちゃにしたのは




全てあの日なんだ。
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