S.U.K.I


「優…………!」



涙を堪えながら優しく語り掛けると、こくんと頷いて口を一所懸命に動かして、確かにこう言った。



『ありがとう』



って………


皆が騒がしく喜びあう中で優は、笑っていた。


一筋涙を流しながら…



「優………?」



私は、不安になって優を呼んだ。


でも、確かに笑顔で、その笑顔とは裏腹な涙を流してまた口を動かした。



『ごめんな』



ピ―――――ッ…


騒がしさが急に止んだ。


皆は、立ち尽くして何も出来なくなりながらただただ、優を見下ろしている。


淘は、力を無くすようにして崩れ落ち、私の肩に持たれた。


所々で啜り泣く声が聞こえてきて淘も私の肩に埋もれるようにして泣いてるのが分かった。


どうして泣くの……?


だって、優、起きたぢゃん。


微笑ってくれたのに。



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