S.U.K.I
「今は泣いてもいいんだから……だから、泣き終わったら前向こう?幸せになろう?―たしっ……そのためなら何でも手伝うからさ。」
還梨の声が嫌に脳裏にこびりついて、溢れだす涙をそのままに目蓋を閉じると、浮かぶのは、優の顔、優の声、優の手、優の足、優の背中、優の表情、優の仕草、すべて優のこと。
優が表れては消え、消えては表れて。
くるくると表情を変えていく、私に幸せをくれるいつもの優が私の目の前にいてくれる。
目の前にいることが当たり前で、いなくなるなんて考えたことなかったから。
当たり前が当たり前ぢゃなくなると、こんなにも辛いんだって思わなかったよ………。
「煌………」
「…………何……?」
私の胸元で還梨が笑って、何だかくすぐったいような変な感じ。
「よかった……いつもの煌だ…」
「ありがと…還梨…中ちゃん。」
「いいけどさ、涙が冷たいよ。」
お礼を言ったら、還梨が笑って、目一杯溜めてた涙を堪え切れなくなった中ちゃんが泣いた。