S.U.K.I
「淘……」
「優君なら…奥の部屋だよ。」
薄暗い地下1階の廊下は、冬ってこともあるのか寒くて苦しくて空気が透き通っていた。
その廊下の奥からとぼとぼと歩いてきた淘に声をかけると目を動かさずにそう言って通り過ぎていった。
一度も、目を合わせてはくれなかった。
「大丈夫、淘だって辛いんだよ。状況に頭がついてってないんだよ。心配しないで、優君に会いにいこう?」
「うん……煌は平気だよ?」
本当は、胸が潰れるくらいに痛かった。
今までに淘が一度だって何があったって、こんなことなかったのに。
悲しそうな背中を見送って、一番奥の少し線香の懐かしい匂いのする重たい扉を押した。
啜り泣きと暗い顔、重たい雰囲気が部屋中を覆って、灰色のようなコンクリートの床と壁に囲まれた部屋に真っ白のベッドが浮いている。