S.U.K.I


心兄の後ろの席に乗ってる私と、お母さんの後ろの席に乗ってる淘は、何も出来なくてとりあえず黙り込む。



「だって葬式って『最後の別れ』の会だろ?!俺、嫌だよ……。」


「最後なんだから行かなくちゃでしょう?」


「だって、『最後の別れ』をしたらもう優兄帰ってこねんだろ?父さんと一緒ぢゃんか……母さん、父さんの時も『少しお別れするだけよ』って言った。でも、結局《死ぬ》ってことは少しも何もねーよ、もう会えねぇもん……」



『父さん』。


その言葉が車内の空気を変えた。


ぽっかりと開いた心の穴は、9年前のあの日から、この車内にいる誰一人として塞がっている人はいないから。


更に口数が少なくなってきた車内で穹がずるずると背もたれに寄りかかりながらぼそっと呟いた。



「俺まだ、優兄に言ってないこととか、やりたいことたくさんあったのに……バカやろ……ちくしょ……」


最後のほうが消えそうになりながら服の袖で目を擦る。


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