S.U.K.I
はっと我に返ると、心兄が振り返って手招きしていた。
少し驚きながら首を傾げると、心兄は、うっすら浮かべていた笑みを消し、悪戯っぽいへの字口で私を見下ろした。
「早く入れって、なんで分かんないかな!」
「ぉわっ!!!」
ぽかんとして、不思議な沈黙を破るように心兄は、私の背中をどんっと押した。
なるほど………玄関開けて待っててくれただけなのね……?
変な声を出した自分に恥ずかしさを覚えながら、力強く叩かれた背中を擦る。
心兄といると、ほっとできる。
すごくすごく安心する。
今までのこと、忘れてしまえるくらいに。
靴を脱いでから、玄関先でびしょびしょな体をタオルで拭いてたとき、ふと目があった心兄は、あの悪戯っぽい笑顔が消えていた。