S.U.K.I


「心兄………………?」


「見に行ってやれ。」



心配になって心兄の名前を呼ぶと真面目な顔してそう言った。


なんのことか全然分からなくて、首を傾げると心兄が重ねるようにぼそりと言う。



「淘の顔、見に行ってやれ。」



私は、その言葉に反応出来なくてただ、返事をするでもなく、心兄の顔を見つめていた。


顔を背けると、心兄は、ぎしぎし唸る廊下を仏間へと歩いていく。


私は、とりあえず、心兄を追うように長靴を脱いで濡れたまま仏間へと行った。


中では、お母さんの啜り泣きに紛れて、大河と千歳の屈託のない話し声が聞こえてくる。


つい、耳を塞ぎたくなった。


お母さんが我を忘れたように人前でこんなに泣いているのを見たのは、いつぶりだろう。


お父さんが死んだときは、これくらいだったかもしれない。


なんだか…よく覚えてないかも。


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