S.U.K.I
箱に触れていた手は、空を掴むように行き場をなくして、徐々に低く、私の体の脇に戻ってきていた。
いつの間にか、空は、分厚い黒い雲に覆われ、私たちを隠そうとしていた。
「ぢゃ、出るぞ……」
「……うん。」
あれから数時間、私たちは、火葬場をあとにした。
小さくなった……淘と一緒に。
お母さんは、ただ茫然と箱を抱えて遠くを見ていた。
目の焦点すら、合っていない。
幸さんのようにもっと、悲しみを爆発させれば楽なのに…という反面、爆発させたくてもできないんだろうな…と納得している自分もいた。
「…母さん。」
心兄が遠慮がちにお母さんに呼びかけた。