S.U.K.I


そう言っても秀は、わけ分からなそうに首をかしげ、少し不機嫌そうに私を見る。



「…せっかく、仲直りして、いい雰囲気だったのに。煌がくしゃみしたからなんかムードぶち壊しかと思って。だから、ごめんって。」



説明をするように今の気持ちなんかをストレートに伝えたら、秀は、への字口を緩めて笑った。



『バカぢゃん?』



つい今、稔ちゃんが買ってきてくれた真新しい筆談用ノートに男としては珍しく綺麗な字がさらさらと書き込まれた。


買ったばかりのペンだからか少し書き始めのところが擦れている。


私は、むっとしながらなんでよ、と切り返した。


秀は、私の言葉に少し考えながら長い睫毛を伏せて、真剣にペンを走らせた。


私は、その横顔や指先に気をとられてぼーっと頬杖をついたままだった。


こつこつ、と机を叩く音がして、はっと顔を上げると秀がへの字の口にして私を見つめていた。



< 210 / 316 >

この作品をシェア

pagetop