S.U.K.I
お母さんは、私が大事なことを言いに来た、と言うのが分かったのか、手を止めて私を見た。
「どうしたの?食いしん坊の煌らしくないねぇ?」
「今日の最終電車であの、海に行く。秀と一緒に……行ってくる。」
お母さんは、目を丸くして見ていたけれど、目を逸らしながらゆっくりと頷いた。
私は、少し緊張しながら立ち尽くしていた。
「……分かった。いってきな。」
少し複雑そうな表情は、まだ頭から離れない淘のことと忘れられないお父さんのことがあるからだと思う。
私は、ゆっくりと頭を下げて台所を後にした。
冷たい廊下を歩いて、迷いなく、向かったのはあの日のままの淘の部屋だった。
机の周りにまだ少し、染みが残っているけど、だいぶ薄くなっている。