S.U.K.I


きっと着くまで長いだろうから、寝かせてあげようと思った。


お財布と携帯くらいしか持ってきていない私たちは、軽かった。


気持ちだけが少し重たく、体を引きずっていた。


窓の外の底の深い真っ暗な世界を覗いていると、だんだん眠たくなってきた。


寝たらダメだ、と自分を奮い立たせて窓の外の世界を呆然と見つめて、秀を受けとめていた。


さらさらの髪の毛がたまに、頬に触ってそのたび、胸がきゅんとする。


濃く、町中を覆いつくす真っ暗な闇に光る、町の光がとてもとても綺麗だった。


ふっと、意識が途切れて、とんとん、と肩を叩かれてびくっとその方向を見た。



『バカ。
寝たいんなら
寝たいってゆえ!
俺ばっか
寝てて格好わりーぢゃん。
遠慮すんな。』



ムカつく、と感じながらも優しく叩かれたノートが妙に嬉しく感じた。



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