S.U.K.I
「はい…、母ですが。」
「あれ…、お父様は?」
看護婦さんは、父の不在を不審に思ったらしく、そう聞いた。
幸さんは、唇を噛み締めながら、苦しそうに言った。
「…あの子たちの父は、15年前、他界してます。それよりも、あの子たちは助かるんですか?!」
「す、すいません!失礼なことをお聞きしました。」
看護婦さんは、ぺこぺこと頭を下げる。
幸さんは、目に涙をためながら、看護婦さんの肩を掴んだ。
「もう謝らなくていい、もう昔のことだから、気にしてないから!…だからあの子たちのことを教えて!助かるの?ねぇ、教えて!」
パニック状態の幸さんは、同じことを連呼しながらそのまま崩れ落ちた。
「ねぇ、優と秀を助けてよ…。」
崩れ落ちた幸さんを見下すようにうつむいた看護婦さんは、しゃがんで幸さんの目線にあわせると静かに語り掛けた。