お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。



小学6年生の春、私には同い年ながら、妹のような気持ちになる、可愛い親友が出来た。



「ヤーヨ!」



「みゅーちゃん、おはよう!」



「おはよう」



彼女の名前は金居弥生-カナイヤヨイ-。

5年生修業後に、他県から越して来た。

ヤヨは明るくて、きゃぴきゃぴしてる子。

最初は私とは合わないと思ってたけど、席が隣になり、初日に教科書を見せてあげたり、学校の案内をしてるうちに、ない物ねだりなのか、彼女の素直さや健気さに引き込まれて、翌日もその次の日も、話すようになってた。

たわいもない話だったけど、テレビ番組が楽しかったとか、どの曲が好きとか、気付けばそんな話にも耳を傾けてた。

ヤヨを知る度に、彼女が好きなものが私も気に入った。

ヤヨの感性と似てたんだと思う。

そして、私もちゃんと子供なんだと思えた。

何よりヤヨは、“しっかりしてるね”とか、“大人っぽい子”と言われて来てた私に、居心地の良い場所をくれた。



「みゅーちゃん、私ね……?」



けど、夏休み明けに会ったヤヨは、印象がガラリと変わって居た。

何があったのか、ヤヨは聞いてもしばらく口にしなかった。

徐々に距離が出来て、私は他のクラスメイトと過ごすようになった。

その間、ヤヨは給食の時間さえも1人で過ごしてた。



「ヤヨ、ちょっと話さない?」



だけど、2学期の終わりに、私はヤヨに勇気を持って声を掛けた。

3学期になったら、卒業まで時間も少ないから。
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