お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
ヤヨは中学受験をするとも聞いてたし、後悔だけはしたくない。



「みゅーちゃん、私……。もうすぐ、居なくなるの……っ……」



「どういう事?引っ越すの?」



「ううん。違うよ……」



学校近くの公園。

夕焼けを眺めながら、止めどなく涙を流すヤヨ。



「私、イケない子だから」



「どうしてそう思うの?」



「……ママ、死なせちゃった……っ……。ちょっとしたイタズラなつもりだったのに……、ママを殺したの……っ……!」



「……嘘、でしょ?」



「本当……。庭で焚き火をしようとしてたら、お家もママも、燃えちゃった……っ」



「…………」



後々、冷静になって考えれば、イタズラとかでなく、本当に興味本位で焚き火をし、火を侮ってしまった故の事故だったんだと、慰められたかも知れない。

今の私なら、必死にヤヨに“事故だよ”と、言い聞かせた筈。

しかし、両親に祖母と亡くしてた私は、人を亡くすという悲しみを、ヤヨより知ってるつもりになってた。

ヤヨだって悲しんでるのに、理解してあげる事も出来ず、拒否反応を示す事しか出来なかった。



「だからこんな私に……、友達なんか居ちゃダメなの……っ……」



「そうだね。その通りだよ」



「ごめんね、みゅーちゃん……」



私に頭を下げて、背を向けて去って行くヤヨの背中を、今でも忘れてない。

もうすぐ居なくなるというヤヨの言葉の意味を知ったのは3日後だった。
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